せむし男の意味とは?ノートルダムの鐘に描かれた病気の男は実在する?

せむし男は果たして実在するのでしょうか。せむし男の意味やノートルダムの鐘のカジモドという主人公がもつ病気や障害との関係について詳しく解説していきます。せむし男になる原因や差別用語との関連、さらにノートルダムの鐘の原作と映画の違いも詳しくレクチャーしていきます。

せむし男の意味とは?ノートルダムの鐘に描かれた病気の男は実在する?のイメージ

目次

  1. 1せむし男とは
  2. 2せむし男が登場するノートルダムの鐘とは
  3. 3せむし男の病気とは?
  4. 4「せむし」は差別用語?
  5. 5せむし男は実在する?
  6. 6くる病は現在でも実在する病気である

せむし男とは

「せむし男」と聞いてすぐにピンとくる人は、恐らくほとんどいないのではないでしょうか。言葉に「男」と付く訳ですので、何らかの行動をしたり、性格や性質を持つ男性のことを指すということは察しがついても、その真意はこの言葉だけでは分かりかねます。

そもそも「せむし」という言葉はある事情により、現代ではほとんど使われることはなくなりました。つまりそれに変わる別の言葉で呼ばれているのが現実なのです。まず「せむし」とはどのような意味があるのか、またその特徴はどのようなものなのかについて詳しく解説していきましょう。

「せむし」の意味

「せむし」という言葉は大きく二つに分けることができます。それは「せ」と「むし」です。ということは虫の種類なのかと思う人もいるかもしれません。または「無視」することと関連するのかと想像する人もいるかもしれませんが、正解は違います。「せむし」とは「せ=背」、「むし=虫」です。

その意味するところは背中の中に正体不明の虫を持っているということです。これはある重い病や症状を指しており、その外見の様子から呼ばれるようになった名称なのです。

症状や特徴は…

背中の中に虫を持つとは、随分不可解な名前だと感じる人も多いでしょう。これは後述しますが、まだ医学が未発達の時代に背中が異様に膨らむ様子を指して、中に正体不明の虫でもいるに違いない、という迷信的な由来で名付けられただけなのです。

その症状は、生まれて間もない幼少期から発症することがほとんどで、体の成長に対して比例して大きくなるはずの骨の成長が遅いという特徴があります。そのため体全体のいたるところに、支障が出てくるのですが、最も目につきやすい特徴が背中が大きく膨らむ点なのです。さらには脚も真っ直ぐになりにくく、O脚やX脚になる特徴もあります。

無理に体のバランスをとろうとするので、その動きも非自然なものになりがちで、なかには体全体の各所に大きな痛みを伴うこともあります。

せむし男が登場するノートルダムの鐘とは

せむし男という言葉が聞き慣れないうえに、その症状や特徴を聞いてもほとんどの人はイメージしにくいというのが本音かもしれません。そこで「せむし男」をより馴染みのある別の角度から解説していくことにしましょう。それはせむし男が実際に登場する世界の名作からです。

その名も『ノートルダムの鐘』です。これならピンとくる人もいるのではないでしょうか。この世界的に有名な小説ですが、実はその別名を『ノートルダムのせむし男』と言います。これも後述しますが、訳あってこの表現は公には使用されなくなりました。しかし、絵本や小説でこの物語を読んだことのある人は、察しがつくことでしょう。

この主人公の男性こそが、まさに「せむし男」そのものなのです。

原作は『ノートルダム・ド・パリ』

ノートルダムの鐘は、19世紀のフランスの作家ヴィトール・ユゴーによって執筆された小説『ノートル・ド・パリ』が原作となります。ユゴーと言えば世界的な名著『レ・ミゼラブル』がとても有名です。フランスロマン主義の巨匠であり、悲劇的な作品を世に送り出した第一人者です。この『ノートルダム・ド・パリ』もその例に漏れません。

つい最近、一部が焼失するという大変ショッキングな事件が世界中を駆け巡った世界遺産、ノートルダム大聖堂を舞台に繰り広げられるせむし男を主人公とする物語になります。名作として長きにわたり大人気を博している大作は、映画やミュージカルの題材となり世界中で上演されてきました。

主人公は障害をもったカジモド

ノートルダムの鐘の主人公は障害を持ったせむし男で、とても醜いカジモドという人物です。小説の文中ではユゴーの手によってもその醜さを正確に表現できないというほどの風貌で、カジモドはかなり怪しい雰囲気として描かれています。

ジプシーで踊り子の美女エスメラルダに恋をして、同じくエメラルダに恋した(カジモドの)育ての親である最高裁判事のフロローとの間で愛憎劇を繰り広げることになります。

権力を盾に愛を迫るフロローを断固として拒否するエスメラルダは、結局火破りの刑に処せられ、フロローも大聖堂からカジモドに突き落とされて死に、カジモドもどこかへ姿を消すという形で悲劇的な結末を迎えます。

やがてカジモドの遺骨がエスメラルダの遺骨とともに発見されるというくだりも描かれています。教会が絶大は権力を持つようになった社会を背景に、傲慢で暴徒化した神職による横暴、それに翻弄される若い男女の愛憎劇が稀代の文豪ユゴーによって見事に描き出されています。

映画化もされているが原作とは異なる

ノートルダムの鐘は、1996年にディズニーにより映画化されました。しかし原作の結末があまりに残酷なため、特に小さな子供たちへの影響を考慮してか、原作とは異なる内容になっています。特にヒロイン、エスメラルダを救出しようとした罪でフロローからお咎めを受け、大聖堂に閉じ込められた後のシーンがまるっきり違います。

原作ではエスメラルダは自分を救出してくれたカジモドには感謝しますが、その醜さゆえにとうていカジモドの愛を受け入れることはできませんでした。その態度に憤慨したカジモドは結局エメラルダが殺されるところをみすみす見逃します。

しかしディズニー映画では、助けてくれたカジモドを讃えて大聖堂から連れ出すエスメラルダの様子が微笑ましく大団円として描かれています。つまり大悲劇の結末がまったく逆のハッピーエンドになるのです。

せむし男の病気とは?

かの世界的な文豪、ヴィクトール・ユゴーをもってしても、正確に表現することができなかったせむし男とは、いったいどのような病を患っていたのでしょうか。小説を読む限りではその全貌は明らかになっていません。また現在「せむし男」という表現そのものが封印されているため、なかなか具体的にイメージできにくいものがあるでしょう。

そこでここからは、いよいよ「せむし男」の実態に迫っていきます。せむし男の正式な病名やその原因、そして外見上の特徴について具体的に見ていきます。

せむし男の病名は「くる病」

ノートルダムの鐘は、別名「ノートルダムのせむし男」とも言われました。せむし男と呼ばれたカジモドが罹っていた病気は、正式名「くる病」と言います。くる病という名前がつく前は「せむし病」とも言われていたわけですが、そのころは医学的な研究がまだ未発達であったため、その原因が解明されていませんでした。

そのため特に背中が盛り上がって目立つ特徴を捉えて、そこに虫が入って悪さをしているという迷信めいた考えから「せむし」と呼ばれるようになったわけです。

ビタミンD不足が原因といわれている

くる病に見られる症状は、骨が正常に石灰化されないために通常よりも柔らかいままです。そのため体の成長の骨が追い付かず、体を支えるはずの役割を果たせないようになります。骨の石灰化には、一定量のカルシウムとリンが不可欠なのですが、何らかの理由で血中のリン濃度が低下することで骨が固まらなくなってしまうのです。

さらにカルシウムとリンを吸収するためには、ビタミンDが必要なのですが、母親の体内にいる期間や生まれて間もない時期に、このビタミンDが不足することが原因して、くる病を発祥すると言われています。日本では国指定の難病の一つになっています。

せむし男の外見上の特徴

せむし男は、前述のようにユゴーすらも明確に書き表すことができなかったというほど常人とは思えない外見と言えます。骨が固まらないため、体の重みに耐えられず脚がO脚やX脚となったり、腕も湾曲します。また、背中も亀の甲羅でも背負っているように大きく膨れ上がった形になります。他に頭蓋骨に変形が見られることもあります。

身長も伸びず筋力も低いため、動きが制限されて敏捷に動き回ることも困難な場合があります。また骨が痛む症状を発症するケースもあり、その場合は寝たきりを余儀なくされる場合もあるのです。

「せむし」は差別用語?

ここまでは何度も「せむし」という言葉を使用していますが、おそらく多くの人はこの言葉を聞いたこともなければ、使ったこともないのではないでしょうか。それには理由があるのです。一般的に「せむし」という言葉が使われなくなった訳を詳しく解説していきましょう。

差別用語・放送禁止用語に指定されている

「せむし」という言葉が現代人の中で聞き慣れないと感じられるのは、差別用語・放送禁止用語に指定されている表現だからです。医学が発達して、その原因が特定されているからには、「背中に虫が入って悪さをしている」という考え方が誤りであるのは明らかです。

そしてその変わった風貌から、明らかに差別意識を持って表現されてきた言葉なので、差別用語・放送禁止用語として指定されるようになりました。そのため「ノートルダムのせむし男」という邦訳も封印されたのです。

ちなみに一時期までは、くる病に対しても「佝僂病」と表記されていましたが、これも背中が曲がった人を意味する差別用語になっており、平仮名で「くる」と表記するようにされています。

「せむし」以外の差別用語とは…

せむし以外にも日本語の中には差別用語がたくさんあります。また、あまりに昔から社会に浸透しているために、それを差別用語と知らずに使っている例も散見されます。例えば、「せむし」のように障害や身体的欠陥を指す差別用語としては、「かたわ」「ブス」「きちがい」「デブ」「つんぼ」「ちんば」「びっこ」などがあります。

それ以外にも職業や身分に関する差別用語として「ポリ公」「ルンペン」「坊主」「乞食」というものもあります。

せむし男は実在する?

ここまで、せむし男、すなわちくる病について説明してきました。しかし実社会の中でせむし男を見ることはあるでしょうか。自分の知り合いや身内などにくる病を患っている例を知っている人がどれくらいいるでしょう。

医療機関で仕事をしていたり、専門で研究している人を除けば、おそらくあまり実感がないというのが正直なところかもしれません。果たして、せむし男は実在しているのでしょうか。

くる病は昔から実在していた

日本でくる病が正式に病気として報告されたのは、江戸時代の17世紀ことと言われています。同じころヨーロッパではイギリスにおいて「せむし男」の存在が正式に発表されたようです。もちろん、その前からくる病は存在していたと思われているそうです。ちなみに日本で「せむし」という表現を使い出したのは戦前からと言われています。

しかし、くる病として正式に原因が特定され治療が開始されたのは近年のことであり、正体不明の病に一般の人々からは大きな差別意識を持って奇異な目で見られてきたのです。

現在でも発症する病気である

くる病は、昔に比べると発症数が激減しており、ほとんど見られなくなりつつあります。しかし、その数が0かと言われればそうではありません。その数は、10万人当たりに1人前後という割合なので、極めて珍しいケースと言えるでしょう。

完治は難しいとされている

くる病は、昔はある程度成長して初めて判明するものであり、しかも判明したところで有効な治療の仕方はありませんでした。しかし現在では生まれて間もない幼児期の段階で判明することが多く、そこから何らかの手が打てるようになりました。

ただ、くる病にも様々な症状があり、単にビタミンD不足から発症する単独の病ではなく他の疾患と連動して発症するケースもあるため、完治するのは難しいとされています。もちろんビタミンDやカルシウム、リンなどを補給することで症状を軟化させることは可能です。

しかし、ある程度は骨の変形などが見られるケースもあるため、歩行を補助するために器具を使用するなどして病気と上手く付き合っていく選択肢が増えてきつつある段階と言えます。

くる病は現在でも実在する病気である

せむし男もくる病という言葉も初めて聞いたという人が少なくないでしょう。その理由は、この病気にかかっている人の絶対数が非常に少なくて、社会でもごく限られた人だけに馴染みのある病だからということがわかりました。しかし、世の中からこのくる病が撲滅されたわけではありません。

世の健康に見える女性たちがそれなりのケアを受けながら妊娠生活を送って、出産したとしてもくる病の子供が生まれてくることがあるのです。その意味では100%防ぐ手立てが見つかっておらず、生まれた後でできる限りの治療をしていくしかないのが現状です。

しかし、この記事から学べたことはビタミンDやカルシウム、リンとミネラルが人間の体にとっていかに大切な栄養素であるかということです。くる病でないから大丈夫ということではなく、これを機に食生活などで普段から健康に過ごしていくための心得を見直していけると良いでしょう。

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