地下鉄御堂筋事件の概要!犯人や痴漢行為を注意した被害者のその後は

地下鉄御堂筋事件とは、電車内での痴漢行為を指摘した女性が被害者となった強姦事件です。この事件は女性専用車両の導入のきっかけとなり現在の社会に大きな影響を与えました。地下鉄御堂筋事件の概要や裁判での判決を確認しながら、事件のその後に迫ります。

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目次

  1. 1地下鉄御堂筋事件とは
  2. 2地下鉄御堂筋事件の概要
  3. 3地下鉄御堂筋事件の裁判
  4. 4地下鉄御堂筋事件のその後
  5. 5地下鉄御堂筋事件が世間に与えた影響
  6. 6地下鉄御堂筋事件は過去最悪の痴漢事件

地下鉄御堂筋事件とは

地下鉄御堂筋事件は、女性専用車両が都市部に本格的に導入されるきっかけになったといわれている事件です。地下鉄御堂筋事件はどのようにして発生し、どのように犯行が行われた事件だったのでしょうか。

大阪で起きた痴漢事件

地下鉄御堂筋事件(地下鉄御堂筋線事件)は、今から30年以上前の1988年(昭和64年)11月4日に大阪で起きた痴漢事件と、そこから波及して起きた強姦事件までの、一連の事件を指します。地下鉄御堂筋事件のきっかけとなった痴漢事件は、大阪市営地下鉄(現在の大阪市高速電気軌道Osaka Metro)御堂筋線の電車内で起こりました。

二次被害となる強姦事件も発生

前述の通り、地下鉄御堂筋事件は痴漢事件だけでは終わりませんでした。地下鉄御堂筋事件は二次被害となる強姦事件にまで発展したことで、日本中に大きな衝撃を与えたのです。地下鉄御堂筋事件の犯人は二人組の男性であり、被害者は当時20歳の会社員女性でした。

地下鉄御堂筋事件の概要

地下鉄御堂筋事件には、どのような人物が関与し、何がきっかけとなって、一連の流れをたどってしまったのでしょうか。地下鉄御堂筋事件の概要をご紹介します。

地下鉄御堂筋線で痴漢発生

地下鉄御堂筋事件の関係者は、5名です。女性3名をAさん、Bさん、Cさん、犯人の男性をD、Eとします。1988年11月4日の夜、大阪市営地下鉄の御堂筋線にAさん(20歳)が乗り込みました。21時頃、Aさんは車内にいたBさんがDとEから痴漢行為を受けていることに気づきます。Aさん自身も半月前にこの二人に痴漢されたことがあり、見覚えがありました。

Aさんは加害者であるDとEに注意し、Bさんの乱された服を直して逃がしました。車内には他の乗客もいましたが、痴漢を見咎めて注意したのはAさんだけだったといいます。

痴漢行為の被害者Bさんが救われたことで、痴漢事件は終わったかに見えましたが、実際にはそうではありませんでした。事態は、更に悪い方向に進んでしまうことになります。

犯人に注意した女性が強姦被害者に

地下鉄御堂筋事件では、勇気を出して犯人の痴漢行為を注意したAさんが、今度は強姦事件の被害者となってしまったのです。注意を受けたDとEはAさんを逆恨みし、つきまといました。そして事件当日、加害者DとEは難波駅で無理矢理Aさんを電車から降ろします。

地下鉄御堂筋線に乗り合わせていた他の乗客は、関わり合いになることを恐れ、助けてはくれなかったそうです。DとEも、以前Aさんと会ったことを覚えており、その時にAさんが一緒にいた女性Cさんに会わせろと脅しました。DとEはAさんに公衆電話をかけさせ、Cさんを我孫子駅前の喫茶店に呼び出させます。

DとEはAさんの首や腕などを掴んで再び地下鉄に乗り、我孫子駅で降りました。喫茶店に来たCさんに男たちは交際を迫りますが、Cさんは断って帰宅してしまいました。

Aさんも一度は逃げ出して地下鉄に飛び乗りましたが追いつかれ、再び終点の中百舌鳥駅で降ろされます。DとEは「コンクリート詰めにして南港に放り込んだろうか」「自分は少年院あがりだ」などと言ってAさんを脅し続けました。

そして同日23時50分頃、DとEはAさんをマンション建築現場に連れ込み、バンドで殴ったりノコギリで脅したりして強姦したのです。大阪府警堺東署と鉄道警察隊が地下鉄御堂筋事件について報道発表したのは11月15日のことで、翌11月16日には新聞でも報道されました。

勇気を出して痴漢を注意した女性が強姦事件の被害者となったこの事件は、社会に衝撃を与えたようです。しかし、多くの人にとってそれ以上に大きな衝撃となったのは、周囲の乗客や駅員が助けるチャンスがあったにも関わらず事件が起きてしまったという事実でした。

逮捕され裁判にかけられる

地下鉄御堂筋事件の犯人DとEは婦女暴行罪で逮捕されました。Aさんは警察の事情聴取に対して、「痴漢行為を見過ごすことができず、周囲も加勢してくれると思って勇気を出して注意したら、逆に居直られた。逃げても殺されるんじゃないかと思った。電車でも喫茶店でも周りの人は怖がってじろじろ見るだけだった」と話したといいます。

改札を出る時に助けを求めなかった理由を警察に尋ねられると、「もう一度声を出して、もしまた誰も助けてくれなかったら、今度は犯人に何をされるかわからないと思った」と、助けを求めることも逃げ出すこともできず、命の危険を感じていた恐怖を語っています。地下鉄御堂筋事件の犯人二人は裁判にかけられることになりました。

犯人2人は痴漢仲間

地下鉄御堂筋事件の犯人二人は、当時22歳と23歳の無職の男でした。驚くことに、大阪市西成区と大阪府住之江区に住んでいた二人を結びつけたのもまた、痴漢行為だったといいます。二人の男は痴漢行為を通して知り合い、痴漢仲間として協力し合っていたのです。

地下鉄御堂筋事件の裁判

1989年1月19日に地下鉄御堂筋事件の第1回公判が行われます。第2回公判は同年2月9日、判決公判は同年2月23日でした。地下鉄御堂筋事件の裁判で明らかにされた犯人の動機や、犯人に下された判決内容はどんなものだったのでしょうか。

当時は社会的にみても、まだ痴漢が重大な犯罪だとは認識されていなかったために、被害者は裁判で更に傷つくことになりました。地下鉄御堂筋事件とその裁判は、社会に大きな問題を提起することになります。

犯人の身勝手な動機とは

地下鉄御堂筋事件の裁判で明らかにされた犯人の動機は身勝手なものでした。犯人のうちの一人は、つき合っていた女性と別れたばかりでムシャクシャしていた腹いせだったと証言したのです。

二人とも定職につかず、母親にお金をせびっては痴漢行為を繰り返していたといいます。地下鉄御堂筋事件の裁判の傍聴者の中には、「被告人は容疑を認めて、口では反省の弁を述べてはいるものの、反省している様子は全く感じられなかった」と感想を述べる人もいたそうです。

弁護士の驚くべき主張

依頼人がどんな凶悪犯であろうとも、弁護人の仕事は、依頼人を助けるために手を尽くすことです。地下鉄御堂筋事件の被告の弁護人も、依頼人のために驚くべき主張をしました。

弁護士は、「逃げようと思えば逃げられたのに、女性が周りに助けを求めなかった点で、女性にも落ち度があった」「周りの乗客が見て見ぬふりをしなければ犯罪には至らなかった」と被告人を擁護したのです。更に弁護士は、被告人たちの母親二人を証人として出廷させ、生い立ちや家庭環境にも同情の余地があったことを訴えました。

判決結果は懲役3年6ヶ月

地下鉄御堂筋事件の裁判の判決が下ったのは1989年2月23日でした。検察側の懲役4年の求刑に対して、懲役3年6カ月の判決が言い渡されました。判決文には、前途ある若者であることと同情すべき成育歴があることを考慮し、情状酌量の余地がある旨が書かれていたといいます。

地下鉄御堂筋事件の裁判を傍聴した人からは、理不尽な弁護に対する憤りや、3年6カ月は短すぎるという意見もありました。性犯罪被害者は、「過剰に露出していたのでは」などという偏見や、心ない中傷にさらされることも多くなります。事件によって心身ともに傷ついた被害者女性の心情は、裁判の中でさらに傷つけられたのではないでしょうか。

地下鉄御堂筋事件のその後

地下鉄御堂筋事件と性犯罪に対する社会の反応に対し、怒りの声をあげて立ち上がったのは女性たちでした。地下鉄御堂筋事件をきっかけに、「性暴力をゆるさない女の会」が発足しました。事件翌年の1989年4月14日には「Stop!ザ・レイプ」集会を開催します。「性暴力をゆるさない女の会」は、その後性犯罪防止のために活動を続けていくことになります。

交通局の緩い反応

「性暴力を許さない女の会」は、地下鉄御堂筋事件の翌月に大阪市交通局や関西私鉄各社に対して要望書を提出しました。内容は「性暴力をなくすよう車内広告やアナウンスなどでPR活動をする」「性暴力を誘発するようなポスターを掲示しない」「駅員(できれば女性)を増員し、性暴力被害を防ぐとともに被害があった場合に迅速な対応を行う」の3点です。

しかし、当時の交通局の対応はひどいものでした。交通局は痴漢や性暴力を「小さな暴力」と表現し、「女性に気をつけるように自衛手段を取るように協力を求める」と回答したのです。当時がいかに痴漢や性犯罪に対する認識が甘く、女性の苦痛に対して理解のない社会だったことが伝わることでしょう。

しかし、「性暴力を許さない女の会」は、痴漢そのものが犯罪であることをアピールするよう求め、地下鉄御堂筋事件の裁判が終わった後も改善を求めて活動を続けました。

現在は犯人は釈放されている

地下鉄御堂筋事件から31年が経過した現在、犯人の男たちは刑期を終えて釈放されています。地下鉄御堂筋事件当時22歳と23歳だった二人は、53歳と54歳になっています。犯罪から足を洗い、真っ当な人生を歩んでいることが望まれます。

被害者は現在51歳

地下鉄御堂筋事件当時20歳であった被害者Aさんは現在51歳となっています。彼女はどんな生活を送っているのでしょうか。こちらも現在の情報はありませんが、せめて現在は静かで幸せな生活を送っていて欲しいと願わずにはいられない人も多いことでしょう。

地下鉄御堂筋事件が世間に与えた影響

地下鉄御堂筋事件をきっかけとし、社会の意識は少しずつ変わり始めます。地下鉄御堂筋事件が人々の考え方に大きな影響を与えたのです。実際にどのような変化が見られたのか、一つずつ見ていきましょう。

女性専用車両導入のきっかけとなる

地下鉄御堂筋事件は女性専用車両や女性優先車輌の導入のきっかけとなったといわれています。日本における最初の女性専用車両は、1912年(明治45年)に東京都中央線に朝夕に限って導入された婦人専用電車だったとされています。しかし本格的に導入されたのは2000年以降のことです。

最初に女性専用車両を導入したのは首都圏の京王電鉄だったため、女性専用車両導入のきっかけは地下鉄御堂筋事件ではないという見方をする人もいるようです。しかし、地下鉄御堂筋事件によって、女性にとって痴漢は苦痛であることが一般的に認められたことに違いはありません。痴漢を減らそうという動きが、一つの実を結んだといえる出来事でした。

痴漢に対する意識の変化

1980年代はまだ「痴漢」や「性暴力」という言葉を使うことすらタブー視されていた時代でした。地下鉄御堂筋事件の4カ月後の1989年3月に大阪府警と関西鉄道協会が制作した痴漢対策ポスターでも、「性暴力」「痴漢」という言葉を避け、「めいわく行為」という言葉を使っています。キャッチフレーズは「あなたの勇気ありがとう」でした。

しかし1994年に大きな変化が見られます。大阪府鉄道警察隊がポスター制作にあたって「性暴力を許さない女の会」に意見を求めたのです。会からは「めいわく行為」ではなく「痴漢」という言葉を使って欲しいという意見が伝えられました。こうして1994年5月から貼られるようになったポスターには「痴漢は犯罪です」という言葉が明記されたのです。

当時は、性犯罪防止を前面に押し出したポスターの掲示を拒否されることも多く、ホームの片隅に短期間貼られるだけだったそうです。しかし現在では、性犯罪について曖昧な表現を使うことは被害を矮小化するとして見直されており、「痴漢は犯罪です」というポスターが、誰の目にもとまるようになっています。

痴漢などの性犯罪に対する意識の向上がこのようなところにも表れているのです。これも地下鉄御堂筋事件が社会に与えた影響といえるでしょう。

車内広告やアナウンスの強化

車内広告やアナウンスでも痴漢防止を強化する動きが始まりました。当時は「痴漢でもお客様」として抵抗感を示していた鉄道側でしたが、現在は車内広告やアナウンスで痴漢撲滅を呼び掛けています。痴漢被害が一般に広く知られることで、男性も女性も、痴漢に対して「No」の声をあげることが必要だという認識に変わってきたのです。

痴漢を誘発しそうなポスターの排除

痴漢を誘発しそうなポスターも排除されるようになりました。以前は雑誌のグラビアや女性の水着姿などのセクシーなポスターが電車の中吊り広告に普通に見られました。しかし地下鉄御堂筋事件後の「性暴力を許さない女の会」からの要望書にもあったように、現在ではそのようなポスターは掲示されなくなっています。

女性の駅員の増員

地下鉄御堂筋事件の後、少しずつではありますが駅員、特に女性の駅員も増員されました。痴漢被害に遭って男性への恐怖心を抱いている女性でも相談しやすく、親身になって対応してもらえるような体制になってきているのです。

地下鉄御堂筋事件は過去最悪の痴漢事件

地下鉄御堂筋事件は、痴漢を注意した女性が強姦の被害者となってしまった点から、過去最悪の痴漢事件といえるものでした。地下鉄御堂筋事件に衝撃を受けた女性たちが立ち上がり、声をあげ続けたことで、痴漢は犯罪であるという社会的意識が向上し、女性専用車両など痴漢防止のための対応策も講じられるようになってきています。

平成27年版の犯罪白書によれば、2006年から2014年の迷惑防止条例違反の痴漢事犯及び電車における強制わいせつ事犯は2007年の4515件をピークとして、やや減少傾向にあります。しかし、それでも毎年の強制わいせつ件数は3500件以上にのぼっているといいます。

また、性犯罪の被害者が泣き寝入りするケースも多いことを加味すれば、実際の被害者はさらに多いことでしょう。

最近では、新たな問題行為も発生するようになっています。「新型痴漢」と呼ばれる行為がその一つで、電車の揺れに合わせて身体を接触させたり匂いを嗅いだりするものです。また、逆に男性が痴漢の冤罪事件の被害者となるケースもあります。女性専用車両は女性だけでなく男性側にとっても身を守る手段になるといえるでしょう。

このような犯罪を完全に撲滅することは困難かもしれません。しかし、一人一人が高い意識を持ち、行動することが社会を変えていくことでしょう。地下鉄御堂筋事件のような悲惨な事件が二度と起こらず、男性も女性も気持ちよく交通機関を利用できる世の中を目指しましょう。

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この記事のライター
jitsu
一児の母です。自然が好きで、放置竹林伐採ボランティアに参加したり、切った竹や木の実を使ってものづくりを楽しんでいます。

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