大切な人を失った時、私たちは通夜や葬儀に参列することになります。でも、通夜って実際に何をする場なのでしょうか。葬儀との違いがよくわからない、参列する時のマナーが不安という方も多いのではないでしょうか。
通夜は故人と最後の夜を過ごし、冥福を祈る大切な儀式です。昔は夜通し故人を見守っていましたが、現代では1〜3時間程度で終わる形が一般的になっています。
この記事では、通夜の本来の意味から現代の形式、葬儀との違い、参列時の流れやマナーまで、わかりやすく丁寧に解説していきます。初めて参列する方でも安心して故人をお見送りできるよう、具体的な内容をお伝えします。
通夜とは何をする場なのか?基本的な意味と目的
通夜の本来の意味と由来
通夜とは、葬儀の前夜に遺族や親族が集まり、故人と最後の夜を過ごす儀式のことです。「夜通し」故人を見守ることから「通夜」と呼ばれるようになりました。別名で「夜伽(よとぎ)」とも呼ばれています。
もともと通夜は、遺族が夜通し灯明と線香を灯して故人の遺体を見守り、霊を慰める意味がありました。医学の発達していない時代には、故人の確実な死亡を確かめる意味もあったのです。現代では、故人とゆかりのある人が最後の夜を共に過ごし、冥福を祈るために行われる儀式として位置づけられています。
現代の通夜の位置づけ
現代の通夜は、18時から19時頃に開始し、僧侶による読経や参列者の焼香が行われ、1時間から3時間ほどで終了する形式が主流となっています。全員で亡くなった人の冥福を祈り、別れを惜しむ重要な儀式として位置づけられています。
通夜の後には、遺族が「通夜振る舞い」という会食の席を設けて、会葬者に食事を振る舞います。これは故人の思い出話などを語り合う大切な時間でもあります。
仮通夜・本通夜・半通夜の違い
通夜には、仮通夜、本通夜、半通夜といった呼び方の違いがあります。仮通夜は故人が亡くなった当日に身内のみで過ごすことを指しており、僧侶を呼んで枕経をあげてもらうこともありますが、儀式的な雰囲気がないのが特徴です。基本的に自宅で行われ、故人と家族が最後の夜を過ごすことに重点が置かれます。
本通夜は、翌日まで夜通し行うことを意味する従来の通夜のことです。しかし現代では、お線香を絶やさずに寝ずの番を務める方も減ってきており、身体や気持ちへの負担も大きいことから「半通夜」として行われることがほとんどです。半通夜は数時間で終える現代的な通夜の形式を指します。
通夜と葬儀・告別式の違いを詳しく比較
それぞれの目的と役割の違い
通夜と葬儀・告別式は、行う目的と内容に明確な違いがあります。通夜は故人とゆかりのある人が最後の夜を共に過ごし、「冥福を祈ること」が主な目的です。一方、葬儀と告別式は故人を葬り別れを告げるための儀式で、「見送ること」が目的となっています。
通夜も葬儀も、僧侶による読経と参列者全員による焼香という宗教儀式を伴いますが、葬儀では僧侶による引導や、弔辞・弔電の読み上げが内容に加わるという違いがあります。引導とは、僧侶が故人に戒名を授けることで、これにより故人は浄土へと導かれるとされています。
開催される時間帯と所要時間
通夜は一般的に17時から19時頃に開始し、1時間から3時間程度で終了します。葬儀の前日の夜に行われることが多く、火葬場の空き状況や僧侶の都合にもよりますが、通常はご逝去の翌日に執り行われることが多いです。
葬儀・告別式は通夜の翌日の昼間に行われ、その後続けて告別式が行われます。葬儀・告別式の方が通夜よりも長時間にわたることが一般的で、火葬まで含めると半日程度を要することもあります。
服装の違い
通夜での服装マナー
通夜の服装については、基本的に喪服を着用するのが一般的ですが、すぐに駆けつけたという意思を示すために、平服でも良いとする考え方もあります。仕事帰りなどで参列しなくてはならない場合などは、そのままの服装でも差し支えありません。
男性の場合、喪服を持っていない方はブラックスーツに黒ネクタイ、女性の場合は落ち着いた黒系のワンピースやスーツの着用でも良いとされています。急なお通夜の場合、女性はダークグレーや紺などの目立ちにくい服装でコーディネートしていれば、スーツでなくても問題ありません。
葬儀・告別式での服装マナー
葬儀・告別式では、より正式な喪服の着用が求められます。男性は白いワイシャツを着用し、ネクタイ・ベルト・靴下・靴はすべて黒一色で統一するのが基本マナーです。女性の場合は、全身を光沢のない黒一色で統一するのが基本的なマナーで、夏場でも五分袖以上、スカートも膝下のものとし、肌の露出を控える必要があります。
通夜の流れを時系列で詳しく解説
受付での手続きと香典の渡し方
通夜の開始が18時とすると、概ねその1時間前頃から参列者向けの受付が始まります。斎場への到着時間は、開始時刻の30分前くらいを目安にしましょう。葬儀場へ到着したら案内看板を確認して、故人の名前が記載された式場で受付を行います。
一昔前は芳名帳に1人ずつ名前や住所を書き足していく形式でしたが、最近はカードタイプで管理されることが多く、参列者に書いてもらった芳名カードを香典と一緒に受付へ提出してもらう流れになることがほとんどです。大きな葬儀では、親族や一般、会社関係などと受付が分かれていますので、注意して列へ並んでください。
開式から僧侶入場まで
通夜の始まる10分前頃から着席をして、定刻を迎えてから司会者より開式の辞が述べられます。式によっては故人のエピソードや出自に関するナレーション等が入る場合もあります。
式場後方から僧侶が入場されます。僧侶が通る際は参列者一同、合掌した状態でお迎えをします。この時は静かに合掌し、僧侶への敬意を示すことが大切です。
読経と焼香の進め方
焼香の順番と作法
式中には、喪主から順番にお焼香の案内が入ります。順番としてはその次に親族や親戚となり、最後に一般の参列者へ案内がされます。焼香の際は、数珠を左手に持ち、右手で抹香をつまんで額の前まで持ち上げてから香炉に落とします。
焼香の回数は宗派によって異なりますが、一般的には1回から3回程度です。焼香が終わったら、故人の遺影に向かって合掌し、一礼してから席に戻ります。
宗派による焼香の違い
仏教の各宗派によって焼香の作法に違いがあります。浄土真宗では抹香を額まで持ち上げずにそのまま香炉に落とし、曹洞宗では1回目は額まで持ち上げ、2回目はそのまま落とすなど、細かな違いがあります。ただし、参列者として不安な場合は、前の人の作法を参考にしたり、1回の焼香で済ませても問題ありません。
僧侶退場から閉式まで
通夜の読経は概ね40分から1時間程度で終わり、僧侶によっては法話の時間がとられる場合もあります。法話では、故人への思いや仏教の教えについて話されることが多く、静かに聞くことが大切です。
僧侶が退場される際には、再度合掌の案内が入ります。司会者より閉式の辞が述べられて、通夜式が終了します。そのまま翌日の告別式に関する集合時間や流れについてのご案内がされることが多いです。
通夜振る舞いでの過ごし方
参列者同士で席について、故人の思い出話などを中心に語り合う会食の時間となります。通夜振る舞いは、料理があらかじめ参列人数を見越して必要な分量が用意されており、また通夜においては食事を通して多くの話をすることが故人の供養になるという考えもあります。
参列者はあまり長居せずに30分から1時間程度で引き上げて、あとは親族を中心とした時間を過ごしてもらうようにしましょう。遺族に気を遣って通夜振る舞いの会食をお断りしてしまう方もいらっしゃいますが、時間の許す限り、なるべく立ち寄るようにすることが望ましいです。
通夜に参列する際の基本マナー
参列前に準備しておくもの
香典の準備と金額の目安
香典は通夜や葬儀のどちらかで渡すのが一般的です。香典の金額は故人との関係性によって決まりますが、一般的には親族の場合1万円から10万円、友人・知人の場合3千円から1万円、会社関係の場合3千円から5千円程度が目安とされています。
香典袋の表書きは、仏教の場合「御霊前」または「御香典」、神道の場合「御玉串料」、キリスト教の場合「御花料」と書きます。名前は薄墨で書くのがマナーとされていますが、現代では普通の黒いペンでも問題ないとされています。
数珠や袱紗などの必需品
お香典を包むために使用する袱紗や、焼香の時に必要な数珠はなるべく持参されることをおすすめします。いずれも仏具店や量販店で購入できるため、いざという際に慌てないためにも事前に用意しておくと安心です。
数珠を複数人で貸し借りしてお参りに使われる方もいらっしゃいますが、マナーとしてはあまりふさわしくない行動になるため、必ず控えるようにしましょう。数珠は個人の持ち物として大切に扱うものとされています。
受付での振る舞い方
受付では、まず記帳を済ませます。その後、右手に袱紗を置き、左手で香典を取り出し、反時計回りに香典の向きを変えて、受付係に向けて渡します。この時、静かな声で簡潔にお悔やみを伝え、両手で香典を手渡します。
お悔やみの言葉は「この度はご愁傷様でした」や「心よりお悔やみ申し上げます」などが適切です。長々と話すのではなく、簡潔に気持ちを伝えることが大切です。
式中の立ち居振る舞い
式中は静かに過ごし、携帯電話はマナーモードにするか電源を切っておきます。読経中は静かに聞き、焼香の順番が来たら落ち着いて行います。席を立つ際は音を立てないよう注意し、他の参列者の迷惑にならないよう配慮します。
写真撮影は基本的に控えるべきですが、遺族から許可があった場合は静かに行います。SNSへの投稿については、遺族の気持ちを考慮して慎重に判断することが大切です。
通夜振る舞いでの注意点
通夜振る舞いでは、故人の思い出話を中心に静かに語り合います。大きな声で笑ったり、故人と関係のない話題で盛り上がったりするのは控えましょう。お酒が出される場合もありますが、飲み過ぎないよう注意が必要です。
食事は遺族が用意してくださったものなので、少しでも口をつけることが礼儀とされています。ただし、長居は禁物で、30分から1時間程度で退席するのが適切です。
通夜と葬儀・告別式のどちらに参列すべきか
故人との関係性による判断基準
故人との関係性によって、通夜と葬儀・告別式のどちらに参列するかを決めることが多いです。家族や親族など故人と非常に近い関係の場合は、通夜と葬儀・告別式の両方に参列するのが一般的です。
友人や知人の場合は、通夜または葬儀・告別式のどちらか一方に参列することが多いです。通夜の方が比較的参列しやすい時間帯であることから、仕事を持つ方は通夜を選ぶことが多い傾向にあります。
仕事や都合による選択の考え方
仕事の都合で平日の昼間に行われる葬儀・告別式に参列できない場合は、通夜に参列するのが一般的です。通夜は夕方から夜にかけて行われるため、仕事帰りに参列することができます。
逆に、夜の時間帯に都合がつかない場合は、葬儀・告別式に参列します。どちらも参列できない場合は、弔電を送ったり、後日弔問したりして弔意を表します。
両方参列する場合の注意点
通夜と葬儀・告別式の両方に参列する場合、香典は通夜で渡すのが一般的です。両方で香典を渡す必要はありません。服装については、通夜では平服でも良いとされる場合もありますが、両方参列する場合は喪服で統一する方が無難です。
両方参列する場合は、遺族への負担を考慮して、挨拶や会話は控えめにすることが大切です。特に葬儀・告別式では、遺族は多忙を極めているため、簡潔な挨拶に留めるよう心がけましょう。
通夜に参列できない場合の対応方法
弔電の送り方とタイミング
通夜に参列できない場合は、弔電を送って弔意を表します。弔電は通夜の前日までに届くよう手配するのが理想的ですが、葬儀・告別式の朝までに届けば式中で読み上げられることもあります。
弔電の文面は、故人への哀悼の意と遺族への慰めの言葉を簡潔に表現します。「ご逝去の報に接し、心からお悔やみ申し上げます」などの定型文を使用するか、故人との思い出を交えた個人的なメッセージを送ることもできます。
香典の郵送方法
香典を郵送する場合は、現金書留で送ります。香典袋に現金を入れ、さらに白い封筒に入れて現金書留で送付します。送付先は自宅または葬儀会場のどちらでも構いませんが、確実に届くよう事前に確認することが大切です。
香典と一緒に、お悔やみの手紙を同封することもあります。手紙では、参列できないお詫びと故人への哀悼の意、遺族への慰めの言葉を書きます。
後日弔問する際のマナー
通夜や葬儀に参列できなかった場合は、後日弔問することもできます。弔問の時期は、葬儀から1週間から1か月程度が適切とされています。あまり早すぎると遺族が忙しく、遅すぎると気持ちが伝わりにくくなります。
弔問の際は事前に連絡を取り、遺族の都合を確認してから訪問します。服装は地味な色合いの平服で構いませんが、派手な色は避けましょう。香典を持参し、故人への哀悼の意を表します。
最近増えている通夜のない葬儀形式
一日葬の特徴と流れ
一日葬とは通夜の儀式をせずに、葬儀・告別式から火葬までを全て一日で執り行うお葬式のことを指します。通夜がある場合と比べて、移動の負担や金銭的な負担が少なくなるものの、通常より式の進行が慌ただしくなるという側面もあります。
一日葬では、午前中に葬儀・告別式を行い、午後に火葬を行うのが一般的な流れです。参列者にとっては一日で全ての儀式が終わるため、遠方からの参列者には負担が軽減されるメリットがあります。
火葬式(直葬)の内容
火葬式は葬儀場などを利用して儀式的なことをするのではなく、火葬場に直接集合して炉前でのお別れをする形式のことを指します。他の形式と比べて、費用面での負担が少なく済むものの、お顔を見てのお別れが5分から10分程度と短くなってしまうため、選ぶ際には家族間でしっかりと相談しておく必要があります。
火葬式では、僧侶による読経や焼香などの宗教的儀式は行わないことが多く、家族や親族だけでシンプルにお別れをします。近年、都市部を中心に選択する方が増えている葬儀形式です。
家族葬での通夜の扱い
家族葬では、通夜を行う場合と行わない場合があります。家族や親族だけで静かに故人を見送りたいという場合は、通夜を省略して葬儀・告別式のみを行うことも多いです。
家族葬で通夜を行う場合は、参列者が限られているため、より親密な雰囲気で故人との最後の時間を過ごすことができます。通夜振る舞いも家族だけで行い、故人の思い出をゆっくりと語り合います。
通夜での失敗しやすいポイントと対策
服装で気をつけるべき細かな点
通夜の服装で見落としがちなのが、アクセサリーや小物類です。女性の場合、真珠はお悔やみの気持ちや悲しみを表す象徴のため、グレーや黒、もしくは落ち着いた白い一連のパールネックレスを用意しておくと良いでしょう。指輪は結婚指輪のみとし、ブレスレットなど他の装飾は避けるようにします。
男性の場合、時計は黒や銀色のシンプルなものを選び、派手な色や装飾のあるものは避けます。靴下も黒で統一し、白い靴下は避けましょう。ハンカチも白または黒のものを用意します。
香典袋の書き方でよくある間違い
香典袋の書き方でよくある間違いは、表書きの選択です。宗教によって適切な表書きが異なるため、事前に確認することが大切です。仏教では「御霊前」「御香典」、神道では「御玉串料」、キリスト教では「御花料」が適切です。
また、名前を書く際の筆記具にも注意が必要です。薄墨で書くのが正式なマナーとされていますが、現代では普通の黒いペンでも問題ないとされています。ただし、ボールペンやサインペンは避け、筆ペンを使用するのが望ましいです。
焼香での作法ミス
焼香でよくある間違いは、抹香の量や回数です。抹香は親指、人差し指、中指の3本でつまむ程度の少量で十分です。多すぎると香炉から溢れてしまう可能性があります。
焼香の回数は宗派によって異なりますが、わからない場合は1回で済ませても問題ありません。大切なのは故人への気持ちを込めて行うことです。焼香後は遺影に向かって合掌し、静かに一礼してから席に戻ります。
通夜振る舞いでの失礼な行動
通夜振る舞いでの失礼な行動として、大声で話したり、故人と関係のない話題で盛り上がったりすることが挙げられます。また、お酒が出される場合でも、飲み過ぎて騒いだり、酔っ払ったりするのは厳禁です。
食事を全く口にしないのも失礼にあたります。遺族が用意してくださった食事なので、少しでも口をつけることが礼儀とされています。ただし、長居は禁物で、適切なタイミングで退席することが大切です。
地域や宗派による通夜の違い
関東と関西での通夜の違い
関東と関西では通夜の慣習に違いがあります。関東では通夜の翌日に葬儀・告別式を行うのが一般的ですが、関西では通夜と葬儀を同じ日に行う「一日葬」の形式が古くから行われている地域もあります。
また、通夜振る舞いの内容も地域によって異なります。関東では寿司や天ぷらなどの料理が出されることが多いですが、関西では精進料理を中心とした内容になることが多いです。
仏教各宗派での通夜の特徴
仏教の各宗派によって通夜の進行や作法に違いがあります。浄土真宗では「御霊前」ではなく「御仏前」を使用し、焼香の際も抹香を額まで持ち上げません。曹洞宗では焼香を2回行い、1回目は額まで持ち上げ、2回目はそのまま香炉に落とします。
真言宗では焼香を3回行い、日蓮宗では1回または3回行います。ただし、参列者として不安な場合は、前の人の作法を参考にしたり、宗派がわからない場合は1回の焼香で済ませても問題ありません。
神道やキリスト教での通夜に相当する儀式
神道では通夜に相当する儀式を「通夜祭」と呼びます。神職が祝詞を奏上し、参列者が玉串を奉奠します。仏教の焼香に代わって、玉串を神前に捧げる「玉串奉奠」を行います。
キリスト教では「前夜式」または「通夜の祈り」と呼ばれる儀式があります。牧師や神父が聖書を朗読し、讃美歌を歌い、祈りを捧げます。焼香は行わず、代わりに献花を行うことが多いです。
まとめ
通夜は故人と最後の夜を過ごし、冥福を祈る大切な儀式です。現代では1〜3時間程度で終わる半通夜が一般的で、葬儀・告別式とは目的や内容が異なります。参列する際は、適切な服装と持ち物を準備し、受付から通夜振る舞いまでの流れを理解しておくことが大切です。
故人との関係性や都合に応じて通夜か葬儀・告別式のどちらかに参列し、参列できない場合は弔電や後日弔問で弔意を表します。地域や宗派による違いもありますが、最も大切なのは故人への感謝と哀悼の気持ちを込めて参列することです。
