認知症になる前にやるべきお金の整理とは?判断力があるうちに準備したい手続きとは

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認知症は誰にでも起こりうる病気です。もし家族が認知症になったとき、お金の管理で困ることがないよう、元気なうちから準備しておくことが大切です。認知症になると判断力が低下し、銀行口座が凍結されたり、詐欺の被害にあったりするリスクが高まります。

この記事では、認知症になる前にやっておくべきお金の整理と、判断力があるうちに準備したい手続きについて詳しく解説します。事前の準備があれば、いざというときも家族が安心して対応できるでしょう。

目次

認知症でお金の管理ができなくなる前に知っておきたいこと

認知症になるとお金の管理で起こりがちな問題

認知症になると、お金の管理に関してさまざまな問題が起こります。まず、日常的な買い物で同じものを何度も購入したり、不必要なものを大量に買ってしまったりすることがあります。計算力や記憶力が低下するため、予算や残高を把握することが難しくなるのです。

さらに深刻なのは、詐欺の被害にあいやすくなることです。オレオレ詐欺や架空請求、悪徳商法など、犯人は判断力の弱さにつけ込んで巧妙に誘導してきます。認知症があると騙されていることに気づきにくく、何度も被害にあうケースも珍しくありません。

判断力があるうちに準備する理由

認知症と診断されると、金融機関は本人の口座を凍結する可能性があります。これは不正利用を防ぐための措置ですが、家族は預金を引き出せなくなり、医療費や介護費を自己資金で立て替えなければならなくなります。

介護にかかる費用は決して安くありません。一時的な費用として介護用ベッドの購入やリフォームなどで平均約74万円、月々の介護サービス費やおむつ代などで平均約8万3千円かかります。平均介護期間61.1ヵ月で計算すると、総額580万円以上にもなるデータがあります。この金額を家族が負担するのは大きな負担となるでしょう。

認知症になる前にやるべきお金の整理【基本編】

銀行口座の整理と統合

まずは、使っていない銀行口座を整理することから始めましょう。複数の銀行に口座を持っている場合、メインで使う口座を決めて、不要な口座は解約することをおすすめします。口座の数が多いと、家族が全体の資産状況を把握するのが困難になってしまいます。

口座を整理する際は、定期的に使っている口座、定期預金がある口座、年金の受取口座などを明確にしておきましょう。また、ネットバンキングを利用している場合は、ログイン情報も整理して、家族が分かるようにしておくことが大切です。

通帳・印鑑・キャッシュカードの管理方法

通帳、印鑑、キャッシュカードの保管場所を家族と共有しておきましょう。ただし、キャッシュカードで家族ができることは出金のみのことが多く、定期預金の解約など契約内容の変更はできません。そのため、暗証番号だけでなく、より包括的な対策が必要になります。

印鑑については、実印と銀行印を区別して保管し、それぞれの用途を明確にしておくことが重要です。また、印鑑証明書の取得方法や、どの手続きにどの印鑑が必要かも家族に伝えておきましょう。

クレジットカードの見直しと整理

使っていないクレジットカードは解約し、必要最小限に絞りましょう。認知症になると、クレジットカードの不正利用や過度な使用のリスクが高まります。また、年会費がかかるカードについても、本当に必要かどうか見直してみてください。

残すクレジットカードについては、利用明細の確認方法や、緊急時の連絡先を家族に伝えておきましょう。オンラインで明細を確認している場合は、ログイン情報も共有しておくことが大切です。

定期預金や投資商品の確認

定期預金や投資信託、株式などの金融商品についても、詳細を整理しておきましょう。どこの金融機関に何があるのか、満期はいつか、配当や利息の受取方法はどうなっているかなど、具体的な情報をまとめておくことが重要です。

投資商品については、リスクの程度や今後の方針についても家族と話し合っておきましょう。認知症になってからでは、複雑な投資判断はできなくなってしまいます。

家族と話し合っておくべきお金のこと

資産状況の共有方法

家族とお金の話をするのは気が重いかもしれませんが、認知症に備えるためには避けて通れません。まずは、認知症は誰もがかかる可能性があることを改めて確認し、お金の情報を共有する重要性について話し合いましょう。

資産状況を共有する際は、預貯金だけでなく、不動産、保険、借金なども含めて全体像を伝えることが大切です。また、月々の収入と支出についても、年金や光熱費、保険料など具体的な金額を共有しておきましょう。

緊急時の連絡先と手続き方法

各金融機関の連絡先や、緊急時の手続き方法についても整理しておきましょう。特に、口座凍結が起こった場合の対応方法や、必要な書類について事前に確認しておくことが重要です。

また、かかりつけ医や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの連絡先もまとめておきましょう。お金の問題は医療や介護と密接に関わっているため、これらの専門家との連携が欠かせません。

医療費や介護費用の準備

将来の医療費や介護費用について、どの程度の備えがあるかを確認しておきましょう。介護保険の自己負担分や、保険適用外のサービス費用など、実際にかかる可能性のある費用を具体的に検討することが大切です。

民間の介護保険に加入している場合は、給付条件や手続き方法についても確認しておきましょう。また、高額療養費制度など、利用できる公的制度についても理解を深めておくことをおすすめします。

判断力があるうちに準備したい重要な手続き

成年後見制度の準備

任意後見契約とは

任意後見契約は、判断力があるうちに、将来認知症などで判断力が低下した場合に備えて、信頼できる人に財産管理や身上監護を委託する契約です。この制度を利用すれば、自分の意思で後見人を選ぶことができ、どのような支援を受けたいかも事前に決めておけます。

任意後見契約は公正証書で作成する必要があり、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されてから効力が発生します。法定後見と違い、本人の意思が尊重されるため、より柔軟な財産管理が可能になります。

後見人の選び方

後見人は、家族だけでなく、司法書士や弁護士などの専門職に依頼することもできます。家族が後見人になる場合は、財産管理の負担や責任について十分に理解しておくことが重要です。

専門職後見人を選ぶ場合は、報酬が発生しますが、専門的な知識と経験を活かした適切な財産管理が期待できます。どちらを選ぶかは、家族の状況や本人の希望を総合的に考慮して決めましょう。

家族信託の検討

家族信託のメリット

家族信託は、元気なうちに財産管理を信頼できる家族に託す仕組みです。成年後見制度と比べて柔軟性が高く、財産運用や管理について自由度の高い設計ができます。また、相続対策としても活用でき、次世代への財産承継をスムーズに行うことができます。

家族信託では、委託者(財産を託す人)、受託者(財産を管理する人)、受益者(利益を受ける人)の関係を自由に設定できます。例えば、自分が委託者兼受益者となり、子どもを受託者として財産管理を任せることができます。

手続きの流れ

家族信託を設定するには、まず信託契約書を作成し、公正証書にすることが一般的です。不動産が含まれる場合は、信託登記も必要になります。手続きには専門的な知識が必要なため、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

費用については、信託契約書の作成費用や登録免許税、公正証書化の手数料などがかかります。スキームの複雑さによって費用は変動しますが、長期的な視点で考えれば、適切な財産管理ができるメリットは大きいでしょう。

遺言書の作成

遺言書の種類と選び方

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。最も確実なのは公正証書遺言で、公証人が作成するため法的な不備が生じにくく、紛失のリスクも低くなります。

自筆証書遺言は費用がかからず手軽に作成できますが、法的要件を満たしていない場合は無効になる可能性があります。また、2020年からは法務局での保管制度も始まっており、紛失や改ざんのリスクを軽減できます。

作成時の注意点

遺言書を作成する際は、財産の内容を具体的に記載し、相続人間でトラブルが生じないよう配慮することが大切です。また、遺言執行者を指定しておくと、相続手続きがスムーズに進みます。

遺言書は定期的に見直すことも重要です。財産状況や家族関係の変化に応じて、内容を更新していきましょう。専門家に相談しながら作成すれば、より確実な遺言書を作ることができます。

日常的にできるお金の管理サポート方法

買い物への同行と見守り

認知症の初期段階では、家族が買い物に同行することで、お金の使い方を見守ることができます。同じものを繰り返し購入していないか、不必要な高額商品を購入していないかなど、日常的な支出をチェックしましょう。

ただし、本人のプライドを傷つけないよう、さりげなくサポートすることが大切です。「一緒に買い物に行こう」という自然な形で同行し、必要に応じてアドバイスを提供しましょう。

資産状況の定期的なチェック

月に一度程度、通帳記入や明細書の確認を一緒に行うことをおすすめします。これにより、不審な出金や予期しない支出を早期に発見できます。また、定期的なチェックを習慣化することで、本人も安心感を得られるでしょう。

オンラインバンキングを利用している場合は、家族も一緒に画面を見ながら残高や取引履歴を確認しましょう。デジタル機器の操作が難しくなってきた場合は、紙の通帳に切り替えることも検討してください。

介護サービスの活用

独居などで家族の目が届きにくい場合は、介護保険サービスを活用することも一つの方法です。ホームヘルパーやデイサービスを利用すれば、職員やケアマネジャーが日頃の様子を確認でき、お金の管理についても気づきを得られることがあります。

また、地域全体で見守る視点を持つことで、家族だけでは気づかない変化を発見できる場合もあります。多くの人の目で見守ることが、家族の負担軽減や安心感にもつながります。

利用できる公的制度と支援サービス

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業は、社会福祉協議会が提供する福祉サービスの一つです。認知症などでお金の管理が不安な人に対し、生活支援員が契約手続きの支援や支払代行などを行ってくれます。

このサービスでは、預金通帳や実印、保険証書などを預けることもできるため、必要な支援に応じて検討してみましょう。ただし、本人にサービス利用の意思があり、契約内容等を理解できることが前提となります。

地域包括支援センターの活用

地域包括支援センターは、高齢者の総合的な相談窓口として機能しています。お金の管理に関する相談も受け付けており、適切な制度やサービスの紹介を受けることができます。

また、ケアマネジャーとの連携により、介護サービスの利用と合わせて包括的な支援を受けることも可能です。困ったときは一人で悩まず、まずは地域包括支援センターに相談してみましょう。

金融機関の認知症対応サービス

多くの金融機関では、認知症に備えた様々なサービスを提供しています。代理人制度を利用すれば、病気や障がいにより来店できない場合でも、家族が一部の手続きを代行できます。

また、家族信託や資産承継信託などのサービスを提供している金融機関もあります。無料相談窓口を設けているところもあるので、そういったサポートを積極的に活用することをおすすめします。

認知症に備えたお金の整理チェックリスト

今すぐできる準備項目

まずは、銀行口座の整理から始めましょう。使っていない口座の解約、通帳・印鑑・キャッシュカードの保管場所の整理、クレジットカードの見直しなど、今すぐできることから取り組んでください。

また、家族との情報共有も重要です。資産状況の一覧表を作成し、緊急時の連絡先をまとめておきましょう。これらの準備は、特別な手続きを必要とせず、今日からでも始められます。

専門家に相談すべき項目

任意後見契約や家族信託、遺言書の作成など、法的な手続きが必要なものについては、専門家に相談することをおすすめします。司法書士や弁護士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家が、個々の状況に応じた最適な方法を提案してくれます。

また、税務面での影響についても、税理士に相談しておくと安心です。相続税や贈与税など、将来的に発生する可能性のある税金についても、事前に対策を検討しておきましょう。

定期的に見直すべき項目

一度準備したからといって安心せず、定期的な見直しが必要です。年に一度程度は、資産状況の変化や家族構成の変化に応じて、契約内容や遺言書の内容を確認しましょう。

また、制度改正や新しいサービスの登場に応じて、より良い選択肢がないかも検討してください。時代とともに変化する状況に対応するため、継続的な見直しが重要です。

まとめ:認知症になる前の準備で家族を守る

認知症によるお金のトラブルを防ぐためには、判断力があるうちからの準備が欠かせません。銀行口座の整理や家族との情報共有から始めて、必要に応じて任意後見契約や家族信託などの制度を活用しましょう。

大切なのは、本人の意思を尊重しながら、家族全体で支え合う体制を作ることです。一人で抱え込まず、専門家や公的制度も積極的に活用して、安心できる老後を迎える準備を進めていきましょう。事前の準備があれば、いざというときも慌てることなく、適切な対応ができるはずです。

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